
日常によくある片付け問題について書いてみます。
まず、未就学児にはまだ「片付け」という行動を自分ひとりで完了するには難しい発達段階にいます。
🔬 何が育たない片付けできないのか?
片付けという行為は、実は以下のような複雑な脳の機能を統合して初めて成立します。
1. 実行機能(Executive Function)
- 必要な手順を考え、計画し、順に実行する力
- **前頭前野(prefrontal cortex)**の発達が鍵
- 発達のピークは7~10歳頃から本格化(Best & Miller, 2010)
2. ワーキングメモリ(作業記憶)
- 「何を片付けるか」「どこにしまうか」を保持しながら動く力
- 5~7歳ではまだ不安定で、8~12歳で安定してくる(Gathercole et al., 2004)
3. カテゴリー化と論理的思考
- 「これはおもちゃ」「これは絵本」など、物を意味で整理する力
- ピアジェの認知発達段階では、**具体的操作期(7歳〜)**から整理的思考が可能になる
🧠 裏付けとなる科学的視点
- 実行機能は、3〜5歳で急速に育つ脳の力であり、切り替え・計画・抑制といった力を指します(Diamond, 2013)。
- 「ごっこ遊び」や「一緒にやる片付け」が実行機能の発達を促すことが多くの研究で示されています。
- 実行機能の発達は乳幼児期から始まり、7~9歳以降でより複雑な管理的行動が可能になるとされています。Diamond, A. (2013).
- 小学校低学年までは、大人のような計画的行動は困難。自己管理や片付けの「完結」はまだ難しい。Best, J. R., & Miller, P. H. (2010).
- 自己制御が整いはじめるのもこの時期で、計画や片付けなどの生活習慣に影響します(Zelazo, 2015)。
🧠 発達の観点から整理すると:
3歳前後(未完了で当然の時期)
- 片付けはまだ親の声かけ・手助けが必要な段階
- 物の分類、順序、完了意識はまだ不安定
- 「片付けごっこ」や一緒に片付ける時間が育ちを支える
4~5歳(模倣と習慣が育つ)
- モデル行動(大人のマネ)を通じて手順の理解が育つ
- 「おしまいにしようね」といった終わりの認識も少しずつ形成される
- 環境と声かけで習慣化の土台がつくられる
6~7歳(自立的行動が始まる)
- 学齢期に入ると、実行機能(記憶・注意・切り替え)が整い始める
- 「何を」「どこに」「どうやって」片付けるかを自分で計画→行動→完了できるようになってくる
- ただし、疲れていたり遊びに夢中な時には補助が必要なことも
親の手伝いなく自己管理できるのはいつごろか?
7歳〜10歳以降に、ようやく親の手伝いなしで片付けが完結する力が整ってきます。
🎯 まとめ
「3〜6歳で片付けない」のは当然です。
この時期に大事なのは、“片付ける習慣”を「教える」のではなく「共に体験する」こと


この理解があると、「うちの子、なんでできないの?」という不安が“まだ育ちの途中なんだ”という視点に変わると思います。